プロジェクトマネジメント

そもそもプロジェクトってなに?

プロジェクトとは何かプロジェクトとは何かプロジェクトと

プロジェクトマネジメントについて深く考えるためには、まず「プロジェクトとは何か」をしっかりと押さえておく必要があります。対象への理解がボヤけた 状態でのマネジメント(管理)などありえません。具体的に、プロジェクトとはどのような仕事を指すのでしょうか。米国プロジェクトマネジメント協会による 「PMBOK Guide(第4版)」では、以下のように定義しています。

独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施される有期性のある業務

表現が小難しいので、分解してみましょう。プロダクトは製品、サービスはそのままサービスです。「所産」が分かりにくいですね。所産とは、英語で表記すると「result」すなわち「成果」あるいは「生み出されるもの」です。つまり、プロジェクトとは「何かを生み出すための活動」ということです。プロジェクトには、最終的にアウトプットしなければならない成果物と、最終成果物を生み出すために必要となる中間成果物を作ることが求められます。スコープと は、最終成果物と中間成果物の集合体を指します。

上記プロジェクト定義の冒頭に出てくる「独自の」という言葉が意味するところは、「同じものがない」ということです。例えば、自動車の製造ラインでは同じ規格の自動車を大量に生産します。作られる自動車は規格が統一されており、同じ車種の自動車はすべて同じように作られます。このような量産プロセスが生み出すものは独自ではないので、プロジェクトとは呼びません。

一方、ITシステムの場合は、同じシステムを繰り返し構築することはありません。ビルを建設するときなども、同じ場所に同じビルを建てることはありませんよね。このような繰り返しのない、一度きりの取り組みで、一つひとつ異なるアウトプットを生み出すこの特徴を「独自性」といいます。

「有期性のある」とはどういうことでしょうか。これは、「始まりがあって、終わりがある」ということです。自動車の製造には、明確な始まりも終わりもありません。生産の中止はあるかもしれませんが、最初から決められたものではありません。片やプロジェクトには必ず「期限」があります。システムのカットオーバーには明確な期日が設定されています。携帯電話などの組み込みソフトウェアを含んだ製品は、納期の遅れが市場での遅れにそのままつながります。

明確な始まりも終わりもない日常的な業務は定常業務です。プロジェクトが定常業務化しているケースもありますが、その場合は、プロジェクトとしての存在意義と継続の是非を判断しなければなりません。

まとめると、三つの要素「明確に定義されたスコープ」「独自性」「有期性」を持つもの。それがプロジェクトです(図2)。

図2●プロジェクトの特徴 個々のプロジェクトは、「明確に定義されたスコープ」「独自性」「有期性」という三つの要素によって特徴付けられる

これらの特徴をもう少し平たく表現すると、プロジェクトとは以下のように言い換えることができます。

プロジェクトとは
やったことがないことを、
何が起こるのか分からないのに、計画して、
予定通りのモノ(コト)を、期限までつくる(終らせる)こと

これはかなりやっかいな要求であることが分かるでしょう。読者のみなさんにまず知っておいていただきたいのはまさにこの「プロジェクトとは難しいものである」ということです。現場で納期や不具合に追われているプロジェクトマネジャーやエンジニアは、プロジェクトに求められる様々な難しい要求に応えられなければなりません。